福島第一原子力発電所事故により汚染された
タケノコの放射性セシウム分布

2011年3月の福島第一原子力発電所事故後、様々な農作物において放射性セシウム汚染が報告されている。農作物における放射性セシウムの分布を把握することは望まざる内部被ばくを避けるための一助になりうる。東京大学大学院新領域創成科学研究科の桧垣匠特任助教、馳澤盛一郎教授、東京大学アイソトープ総合センターの桧垣正吾助教、信州大学ヒト環境科学研究支援センターの廣田昌大助教による研究グループは、福島第一原子力発電所事故に伴う全国のタケノコの汚染状況を把握するため,2012年4-5月に全国10地点よりタケノコ(孟宗竹、Phyllostachys pubescens)を採集し,アイソトープ総合センターに設置されているゲルマニウム半導体検出器を用いて放射性核種分析を実施した。調査地点は、福島県伊達市(41 km)、福島県会津若松市(102 km)、茨城県つくばみらい市(185 km)、千葉県柏市(195 km)、千葉県市川市(215 km)、群馬県安中市(225 km)、愛知県豊橋市(440 km)、京都府木津川市(555 km)、大分県別府市(980 km)、長崎県長崎市(1140 km)、の10地点である。なお、括弧内は福島第一原子力発電所からの距離を示す。
 各サンプルを調査したところ、豊橋市以西で採集したタケノコはすべて検出限界値以下であったが、他の地点で採集したタケノコからは放射性セシウム(134Cs, 137Cs)が検出された。最大の放射能濃度値を示したサンプルは福島県伊達市のもので、その134Csおよび 137Csの放射能濃度はそれぞれ15.3 kBq/kg乾重量(1.34 kBq/kg 生重量)、21.8 kBq/kg 乾重量(1.92 kBq/kg 生重量)であった。 また,タケノコ内部における放射性セシウムの分布を検討すべく、採集したタケノコを(1) 根元(Basal part)、(2) 稈鞘(いわゆる皮)の先端部(Upper culm sheath)、(3) 稈鞘の基部(Lower culm sheath)、(4) 稈鞘の頂端部(Apical culm sheath)、(5) 稈(可食部)の先端部(Upper edible part)、(6) 稈の基部(Lower edible part)、の6つの部位に分割し、各部位ごとの放射性セシウム濃度を測定した。その結果、(5) 稈の先端部、(4) 稈鞘の頂端部、は他の部位よりも放射性セシウムの濃度が高いことが判明した。

上記の内容を含む研究成果は、2014年5月15日付でPLoS ONE誌電子版に掲載された。

Higaki T, Higaki S, Hirota M, Hasezawa S (2014) Radiocesium Distribution in Bamboo Shoots after the Fukushima Nuclear Accident. PLoS ONE 9(5): e97659. doi:10.1371/journal.pone.0097659

 

 


Figure. (下)つくばみらい市のタケノコ(2012年4月採取)に含まれていた放射性セシウムの分布
(上)タケノコの各部位の分類