研究内容

  1.  放射線利用の基盤としての放射化学・放射線安全管理に関する研究
     キーワード:放射化学、放射線安全管理、放射線教育、合理的な放射線規制
    放射線の利用には原発事故などの負の側面があります。しかし、有益な面も多い放射線を、より有効にもっと安全にさらに合理的に利用できるよう放射化学的なアプローチから研究を行っています。例えば、放射性のヨウ素-131は、核医学において甲状腺癌の診断や治療に使用されていますが、投与後の放射性廃液を一般排水へ放出できる濃度の限度が極めて低く、半減期が8日とやや長いため病院での治療頻度を容易に向上できないことが問題になっています。これを廃液中から回収して保持し、排水しないようにすれば治療頻度が向上します。回収に適した物質や条件等の探索などの研究に取り組んでいます。また、放射線安全の本質的な向上に寄与できる教育訓練資料の開発も行っています。
  2.  原子力発電所事故により拡散した放射性物質の挙動および除去に関する研究
     キーワード:放射性ヨウ素、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、トリチウム
    平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故後から、環境中に放出された放射性物質の挙動の解明に取り組んできました。例えば、社会的な関心事となったいわゆる「セシウム花粉」により放射性セシウムが大気中に再拡散され、一般市民が吸入して内部被ばくを引き起こす可能性について調査し、花粉よりも砂埃の方が影響が大きいことなどを実測して明らかにしました。また、不溶性の放射性セシウム含有微粒子の挙動や分布に関する研究、汚染水処理の問題にも取り組んでいます。
    本研究では、得られた成果がすぐに人の役に立つことを目指して、また、環境の安全安心な状況への回復に寄与したいと考えています。

1. Radiochemistry and radiation safety management as a basis for using radiation
The use of radiation has some negative aspects, such as a nuclear power plant accident. However, radiation is beneficial in many ways. We are conducting research from a radiochemical approach to make more effective, safer, and more rational use of radiation. For example, iodine-131 is used in nuclear medicine for the diagnosis and treatment of thyroid cancer, but the concentration limit of drain water that can be released into the general wastewater is extremely low, and its half-life (8 days) is rather long, so the frequency of treatment in hospitals cannot be increased. The frequency of treatment may be increased by collecting and keeping iodine-131 from the effluent. We are working on research to find suitable substances and conditions for collection. And we also develop educational and training materials that contribute to the essential improvement of radiation safety.

2. Behavior and removal of radionuclides dispersed by the FDNPP accident
Since immediately after the TEPCO's Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (FDNPP) in March 2011, we have been working on clarifying the behavior of radioactive materials dispersed into the environment. For example, we have investigated the possibility of internal exposure caused by the re-diffusion of radioactive cesium into the atmosphere by so-called "cesium pollen," which has become a social concern, and inhalation by the public. We have clarified the impact of contaminated sand and dust is greater than that of pollen by measurements of face masks of citizens who have lived in the Fukushima prefecture. We are also conducting research on the behavior and distribution of insoluble radioactive cesium-containing microparticles (CsMP) and the treatment of contaminated water generated at the FDNPP site.
In this research, we aim to make the results immediately useful to the public and contribute to the restoration of the environment to a safe and secure situation.

発表論文の解説

  1. 2024年2月13日掲載:「大地の謎に迫る!土中に含まれる金属の秘密とは?」 (アイソトープ総合センター)
  2. 2023年5月12日掲載:「α-シクロデキストリンの経口摂取が放射性ヨウ素の甲状腺集積を抑制」 (アイソトープ総合センター)
  3. 2020年9月30日掲載:「使用済みマスクから環境中のセシウムボールを探す」 (東京大学環境報告書2020, 21)
  4. 2020年7月21日掲載:「先端X線分析により原発事故由来の不溶性セシウム粒子の生成・放出過程を解明」 (理学系研究科プレスリリース)
  5. 2020年4月7日掲載:「一般市民に低線量内部被ばくを及ぼしうる放射性セシウム中の不溶性粒子存在度の解析」 (放影協ニュース 102, 18-19
  6. 2014年7月2日掲載:「セシウム花粉の内部被ばく影響は砂埃に比べて無視できる」(UTokyo Research)
  7. 2014年6月25日掲載:「セシウム花粉の内部被ばく影響は砂埃に比べて無視できるほど小さい」(東京大学記者発表)
  8. 2014年6月25日掲載:「セシウム花粉の内部被ばく影響は砂埃に比べて無視できるほど小さい」(アイソトープ総合センター)
  9. 2014年5月26日掲載:「福島第一原子力発電所事故により汚染されたタケノコの放射性セシウム分布」(アイソトープ総合センター)
  10. 2012年3月16日掲載:「不織布製花粉用マスクに捕集されるスギ等の花粉に含まれる放射性セシウムの定量分析」(東京大学記者発表)

学生の受け入れ

  • 2024年度 卒研生1名(国際基督教大学)
  • 2023年度 卒研生2名(国際基督教大学)
  • 2022年度 修士課程1名(理学系研究科化学専攻)、卒研生1名(国際基督教大学)
  • 2021年度 修士課程1名(理学系研究科化学専攻)、(短期)博士課程1名(広島大学大学院)
  • 2019年度 修士課程1名(理学系研究科地球惑星科学専攻)
  • 2018年度 修士課程1名(理学系研究科地球惑星科学専攻)、卒研生1名(国際基督教大学)
  • 2017年度 卒研生1名(国際基督教大学)
  • 2011年度 卒研生1名(国際基督教大学)、(短期)卒研生3名(熊本大学)

外部資金

  1. (競争的研究資金)広島大学・長崎大学・福島県立医科大学 放射線災害・医科学研究拠点 共同利用・共同研究「環状オリゴ糖の生体への放射性ヨウ素吸収低減効果の検証」、研究期間: 2024年4月- 2025年3月
  2. (競争的研究資金)令和4年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(B)「食品添加物で放射性核種の体内移行を阻害・促進させる」(代表)、研究期間: 2022年4月 - 2025年3月
  3. (競争的研究資金)令和4年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)「ヒヤリハット事例を生かした放射線利用における安全文化醸成のための教材開発」(分担)、研究期間: 2022年4月 - 2026年3月、代表者: 鈴木智和(大阪大学)
  4. (競争的研究資金)令和4年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)「食品・日用品原料物質を用いて放射性廃液処理のコスト削減と環境負荷低減を実現する」(分担)、研究期間: 2022年4月 - 2025年3月、代表者: 廣田昌大(信州大学)
  5. (競争的研究資金)令和3年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(B)「放射線教育のSTEAM化によるEBPM支援プログラムの開発」(分担)、研究期間: 2021年4月 - 2024年3月、代表者: 松田尚樹(長崎大学)
  6. (競争的研究資金)令和3年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)「甲状腺内用療法患者から排出される放射性ヨウ素の高効率除去に関する研究」(分担)、研究期間: 2021年4月 - 2024年3月、代表者: 伊藤茂樹(熊本大学)
  7. (奨学寄付金)日鉄セメント(株)「廃棄物の減容技術開発のため」2021年
  8. (学内競争的資金)2020年度若手研究者の国際展開支援事業(オンライン国際研究集会開催支援事業)、開催事業:2nd Fukushima Resilience Research Work Shop "Recent progress in Radioisotope Therapy"、開催日:2021年1月21日
  9. (競争的研究資金)令和2年度国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))「治療用同位体製造と放射性医薬品合成の共同研究」(分担)、研究期間: 2020年10月 - 2023年3月、代表者: 和田洋一郎(東京大学)
  10. (競争的研究資金)2019年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)「コメの放射性セシウム汚染に、高濃度セシウム含有不溶性微粒子は影響しているか?」(代表)、研究期間: 2019年4月 - 2023年3月
  11. (学内競争的資金)2020年度若手研究者の国際展開事業(若手研究者国際発信事業)、派遣予定先:アムステルダム(オランダ)、派遣期間:(コロナ禍のため採択後辞退)
  12. (競争的研究資金)平成28年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)「「短期で安価、すぐにできる」新しい米の放射性セシウム汚染根治療法の探索」(代表)、研究期間: 2016年4月 - 2019年3月
  13. (学内競争的資金)2019年度若手研究者の国際展開事業(若手研究者国際発信事業)、派遣先:王立アデレード病院, アデレード(オーストラリア)、派遣期間:2019年11月
  14. (競争的研究資金)公益財団法人放射線影響協会 平成29年度研究奨励助成金「一般市民に低線量内部被ばくを及ぼしうる放射性セシウム中の不溶性粒子存在度の解析」(代表)、研究期間: 2018年4月 - 2021年3月
  15. (学内競争的資金)平成30年度若手研究者の国際展開事業(若手研究者国際発信事業)、派遣先:デンマーク工科大学, ロスキレ(デンマーク)、派遣期間:2018年10月
  16. (競争的資金)一般社団法人日本放射線安全管理学会 平成31年度放射線安全規制研究の重点テーマ検討グループ、「e-learningを基盤とした放射線業務従事者教育訓練の全国標準オンラインプラットホーム開発」(代表)、期間: 2017年10月 - 2018年3月
  17. (奨学寄付金)日鉄住金セメント(株)「廃棄物の減容技術開発のため」2017年
  18. (競争的研究資金)広島大学・長崎大学・福島県立医科大学 放射線災害・医科学研究拠点 共同利用・共同研究「福島森林下流水域水田の汚染メカニズム解明」(代表)、研究期間: 2016年6月- 2021年3月
  19. (競争的研究資金)平成28年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(B)「ロバスト性の高い放射線科学文化の創造 - 放射線ラーニングの新展開」(分担)、研究期間: 2016年4月 - 2019年3月、代表者: 松田尚樹(長崎大学)
  20. (競争的研究資金)クリタ水・環境科学振興財団 2014年度国内研究助成「環境水を介した放射性セシウムの稲への移行メカニズムの解明」(代表)、研究期間: 2014年10月 - 2015年9月
  21. (奨学寄付金)大和紡績(株)「工学研究のため」2012年
  22. (奨学寄付金)EMFジャパン(株)「放射能濃度測定用システム開発のため」2012年

競争的研究資金等による研究への参加

  1. (競争的研究資金)福島国際研究教育機構 委託研究事業「大学・機関連携による有用RI製造技術開発」、研究期間: 2024年4月- 2030年3月、代表者: 中野貴志(大阪大学)
  2. (競争的研究資金)広島大学・長崎大学・福島県立医科大学 放射線災害・医科学研究拠点 共同利用・共同研究「環状オリゴ糖の生体への放射性ヨウ素吸収低減効果の検証」(共同研究者)、研究期間: 2022年4月- 2024年3月、代表者: 伊藤茂樹(熊本大学)
  3. (競争的研究資金)広島大学・長崎大学・福島県立医科大学 放射線災害・医科学研究拠点 共同利用・共同研究「環状オリゴ糖を用いた新規放射性ヨウ素回収・保持システム開発」(共同研究者)、研究期間: 2016年6月- 2022年3月、代表者: 伊藤茂樹(熊本大学)
  4. (再受託事業)文部科学省 国家課題対応型研究開発推進事業、英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業、「廃炉に関する基盤研究を通じた創造的人材育成プログラム-高専間ネットワークを活用した福島からの学際的なチャレンジ-」(業務参加者)、研究期間: 2016年4月- 2020年3月、代表者: 青柳克弘(福島工業高等専門学校)
  5. (競争的研究資金)独立行政法人日本学術振興会 平成29年度 二国間交流事業 共同研究「日本・スウェーデン連携での進行がんのTargeted alpha therapy」(研究参加者)、研究期間: 2017年4月 - 2019年3月、代表者: 児玉龍彦(東京大学)
  6. (競争的研究資金)環境省 平成29年度放射線の健康影響に係る研究調査事業「地域保健活動における放射線リスクへの対応のあり方に関する研究」(研究協力者)、研究期間: 2017年4月 - 2018年3月、代表者: 山口一郎(国立保健医療科学院)
  7. (競争的研究資金)AMED 平成28年度「次世代がん医療創生研究事業」研究領域B(ユニット型)「転移性進行がんの診断と治療を可能にする革新的がん細胞ターゲッティングシステムの開発」(研究参加者)、研究期間: 2017年5月 - 2018年3月、代表者: 児玉龍彦(東京大学)
  8. (競争的補助金)原子力規制庁 平成28年度 原子力規制人材育成事業(原子力人材育成等推進補助金)「大学等放射線施設による緊急モニタリングプラットフォーム構築のための教育研究プログラム」(協力機関実施責任者)、期間: 2016年8月- 2020年3月、代表者: 永山雄二(長崎大学原爆後障害医療研究所)
  9. (競争的研究資金)長崎大学原爆後障害医療研究所共同研究「福島森林下流水域水田の汚染メカニズム解明」(共同研究者)、研究期間: 2014年4月 - 2016年3月、代表者: 中島覚(広島大学)
  10. (競争的研究資金)独立行政法人科学技術振興機構: 復興促進プログラム(A-STEP)「肥料成分を用いた汚染土壌からの放射性セシウム除去剤及び除去方法の開発」(研究参加者)、研究期間: 2012年10月 - 2013年9月、代表者: 廣田昌大(信州大学)

PAGE TOP